前回は「日本人オーナーがグアムでレストラン経営を成功させたポイント」について書きました。
(前回のお話はこちら)
今度は逆に失敗した人たちからその原因を分析し、学びたいと思います。私はむしろこちらの方が大切だと思います。
今回ご紹介する事例のレストランは、私も開業時にお仕事もいただいていました。関係者として関わってきた視点で、ストーリーを追ってケーススタディしていきます。
実際にあった、ある居酒屋風の日本食レストラン開業のお話です。
新しい日本食レストランの開業に高まる期待
全て実話ですので、実名や具体的なことは伏せさせていただきます。少し前の話ですが、現在でも十分通ずるお話です。
その当時のグアムでは、日本食ブームが起きていました。工事中にお店の電光看板の取り付けが終わると、地元では「もうすぐ新しいジャパニーズレストランができる!」と話題になりました。それだけ期待されていたのです。
そのお店のオーナーは私の古くからの知り合いのビジネスマンのAさん、ツーリスト向けのショップを経営してそれなりに成功はしていたものの、飲食業は初めて。
その理由を尋ねると「いつも外に飲みに行っていたけど、それだったら自分でやって自分のところで飲めばいいかな、って思って」と。軽い感じで言っていましたが、毎日汗びっしょり流して、頑張って厨房を清掃したり、準備していました。
シェフにはAさんの古くからの友人のBさん、私も知っている人でしたが、料理人のイメージがまるでなかったのでちょっとびっくりしました。
このお店はグアムの中心部ではありませんが、レストランとしての立地条件は悪くはありませんでした。ローカルに人気のスーパーマーケットが向かい側にある交差点の角地、気になったのは駐車場の少なさですが、それも近隣の駐車場を利用してしまえば大丈夫そう。また、近くにはリゾートホテルも3軒あり、ツーリストの来店も見込めました。そしてオープンへのカウントダウンが始まったのですが・・・
オープンが近づくにつれ不安に・・・でも大賑わい
私はこのお店の広告、ホームページ、メニューのデザインと制作の仕事をしていたのですが、オープン数日前になってもメニューが固まりません。当初は盛りだくさんで豊富だったメニューが「あれはなくなったから」「これはやめておきます」と減る一方。どうも話が違ってきました。
さすがに開店3日前に「もう印刷間に合いません!」「だってまだ決まってないんだよ!」とやりとりした時はお互い口調がきつくなっていました。そして「とりあえず印刷始めて!」となりました。
さて、オープン当日は地元の人を中心に大賑わい、シェフのBさんはなんだかオロオロしているように見えます。店内は満席で私たちは席がないので帰りました。翌週末、やはり多くのお客さんが来ていますが、シェフBさんの姿がありません。その代わりにAさんが厨房に入って汗びっしょりです。
オープンは成功したのに、お客さんをつかむことはできず・・・
「どうしたんですか?」「どうもこうも・・・」と事情を話してくれました。結局Bさんは実はほとんど素人で、プロらしい料理がぜんぜんできなかったそうです。Aさんもびっくりして「騙された、ふざけるな!」と喧嘩になって、Bさんも逆ギレして逃げるように辞めていったそうです。それでもAさんはお店を続けました。
そして1ヶ月後、だいぶ客足が落ち着いてきました。
3ヶ月後、ほとんどお客さんがいなくなりました。
オープンから掲載し続け、それなりに反応のあった地元新聞への広告もやめました。
そして6ヶ月経った時、「せっかく作ってくれたホームページ、もういらないから・・・」「えっ!」
その数日後から、看板に灯が灯ることはありませんでした。
このレストランの失敗のポイント
1.未経験者のオーナーが飲食業を甘く考えていた
2.馴れ合いの関係でメインシェフという要職を決めてしまった
3.シェフの力量を採用前に確認せず、何かあった時のバックアップも用意していなかった。
4.結果スタートダッシュは成功したものの、返って悪評が広がってしまい、ビジネスを壊してしまった。(お客さんは最初に嫌な思いをすると、そのお店には二度と行きません。新しいお店ならすぐにその話は伝わってしまいます)
グアムには日本人でなくてもそれなりの和食メニューを作れるシェフはいます。何かあった時のために、パートタイムでもいいので代わりを用意しておくべきでした。
Aさんは準備不足と見切り発車で、多くの投資を失いました・・・。
教訓:
1.いくらグアムとはいえ、全くの素人がメインで厨房に立てるほどほど甘くない
2.料理人は腕と人柄が不可欠
次回も失敗例をご紹介します。
↓ ブログ村ランキングに参加しています。
コメント